玄関でチャイムを鳴らすと二つ下の妹が出迎えてくれた。
それなりに年を取った感じはするけど案外、変化がないので安心した。
少し口元の肉が重力に負け始めていて顔を見てるとまたまた亡くなった母親に似てきたな。と 思って、その事を妹に話しながら笑った。
たわいもない話をしながら和室の壁に穴が開いてるのを見つけて妹に尋ねると やはり癇癪を起こした義弟が壁をなぐって開けたもんらしい。
パワハラが原因でうつ病になって自分の人生が狂い始めたくやしさを壁にぶつけたようだ。
その時に止めに入った妹に 「お前は壁と俺とどっちが大事やねん!」と怒鳴られたらしい。
まさか、壁とは言えないから黙ってたと妹が言うので思わず笑ってしまった。
妹は見合いで結婚していて義弟は当時はスマートで身長も180cm以上ある長身で顔立ちも 良かったし真面目で大人しくって義兄である俺とは正反対のタイプだった。
そんな義弟も発病後は人が変わってしまったらしい。
あの真面目で大人しい義弟が道路を歩く酔っ払いを怒鳴りつけてたりする話を聞くとそれが俺なら分かるのだが・・・(笑)
パートに出るのは生活のためもあるけど、亭主と休みに二人きりでいたくないせいもあるらしい。 一人息子は高校生になり食事も自室で済ますって話しを聞いたり壁の穴を見たりすると なんだかやるせなかったりありがちな話。 しかもリビングには未だにブラウン管のテレビが置いて有って買い替えればいいのにって言うと
「もう、テレビみたいのないし子供がちょうど受験やったりしたからええねん。」
『要は家族団らんなんて要らんってか(笑)』
「・・・・うん。」
義弟が飲んでいる大量の薬を見せられた。
『まーちゃんとええ勝負なくらい薬飲んでるな!』
いろんな妹の話を聞いていて
『夫婦って添い遂げるって難しいなぁーって思うわ。いろんなことあるしな。』
馬鹿な兄貴の話を聞いてるうちに塞込んだ顔の 妹が少し笑った。
今度買った車の写真をiPhoneで見せた。
呆れながらも兄貴の話を笑いながら聞く妹。
俺と話てると気晴らしになるらしく帰り際に
「これを機会にまたおいでーな!今度は旦那がいてるときに。」
『うん、でも会っても気をつかわすのも悪いし・・・気も使いたくないな』 二人笑った。
人生っておもろいようなおもろくないような・・・
俺、案外ハッピーなのかもな。
「淋しいくらいがちょうどいい」か。
いつかいただいたコメントを思い出した。
そんなものかも知れないとふと思った。
帰宅後、バルコニーでたばこを吸いながら夜空の綺麗で鮮やかな月を見た。
鬼束ちひろ - 月光(album version)
いつもより月が綺麗な盆休みだった気がする。
娘への暑中見舞いメールの返事に
お父さんもお元気で\(^^)/
その一行が嬉しかったり胸が熱くなったり
ドライブまにあ 日々燦々 / 美しく淋しき月光